読書といえばビジネス書か哲学書。
社会人になってからはもっぱらそういう本しか読んでこなかった。
若い時は娯楽をバカにしていた。
タナカ「パチンコなんて無駄でしかないですよね?やっててなんか意味あるんすか?」
上司「パチンコは必要だよ?それもとことんやるのがいいんだよ。」
そんなものに時間と金を使って、いったい何の意味があるのかと。
若気の至りで、当時だいぶ上の上司に食ってかかったことがある。
上司曰く、娯楽はなくてはならないと。
おいおい、、、パチンコはなくてもいいだろ・・・。寝言は寝て言え・・・。
マジでそう思っていた。
時は流れて中間管理職。
当時の上司の言葉を思い出したところだ。
中間管理職になると、これまで見えなかった会社の事情が見えてくる。
経営判断に近い立場になるとともに、メンツだの立場だの体裁だの、そんなもののために愚かな判断をする場面にも遭遇する。
間違っているとは思っても、組織(それも上層部)に対抗するのは得策ではない。
社畜を自覚しながらもグっと歯を食いしばる。
この時期からどーも自分の能力・スキルを高めようとする気持ちが失せていった。
仕事が苦痛でしかなくなる。
これまで何のために頑張ってきたのかと。
その頑張りの意味は何だったのかと。
急にハシゴを外された気分になる。
仕事への依存度が高い人はこういうふうになることもある。
頑張ったその先の延長線上にあるのがそうじゃなかった感。
生きてる意味=仕事 に近かったもんだから、え?じゃあ俺の生きてる意味って・・・?
そう感じることも多くなった。
ここでいつぞやの上司の言葉を思い出した。
娯楽はなくてはならないと。
当時の上司が同じ状況で、同じ思いで発した言葉ではないと思う。
でも、娯楽を楽しむ意味はある。
そういう生き方にも意味はある。
当然のことなんだけど、今更になって娯楽が必要だと腑に落ちた気がした。
本にはいろんなジャンルがあるけれども、ミステリーは取っ掛かり安く、読み進めやすい印象があった。
それに妻がミステリー好きなこともあって家には何冊か既に置いてあった。
ふと手に取ったのは、くわがきあゆ『レモンと殺人鬼』
表紙の女性がめっちゃこっち見てる・・・。
でも、何だか気になる・・・。
何の前評判も見ることなく読み始めた。
当然ながらこれを仕事に活かそうと思うと、相当高度な抽象化をしないといけないのでそれはしない。
純粋に小説を楽しむことにした。
やるせない気持ちになった時は、無理しないで心の休養も必要。
長いサラリーマン人生でこれまでは短距離走の走り方だったのかな。
しばし休憩して、まだ半分以上も続く道を走り切る術を身につけねば。
そのうち自分も主人公である小林美桜のように、真逆の立場に気づく時が来るかもしれない。 (人殺しはしないけどね)